2007年09月04日

博霊の巫女との邂逅〜東方邂逅記〜

気が付けば僕は神社にいた。
自分の意志でここに来たわけではなく、言葉通り気が付けばここにいた。
何故この場所に来たのか、どうやってここに来たのか、全て記憶にない。
まるで記憶を消されたような、そんな違和感が頭の中に漂っている。
とりあえず、ここがどこなのか理解する為に辺りを見回してみることにした。
まず目に入ってきたのは神社の名前だった。
「…博麗神社?」
聞いたことのない名前に少し戸惑う。
少なくとも日本にはないはずだ。
見た目はそこらの神社と大差ないのだが、言葉に出来ない不思議な雰囲気が目を惹きつける。
思い切って境内に入ってみた。
中では巫女さんの少女が掃除をしている。
「あら、見たことない顔ね。お客様かしら?」
突然話し掛けられたのでビックリした。
僕は慌てて言葉を返す。
「あ、僕はその…道に迷っちゃって;」
怪しまれないように妥当な嘘をつく。
気が付いたらここにいました、なんて言えるわけがない。
「そうだったの。それで、どこに行こうとしてたのかしら?」
「え〜と、清陵学園って言う学校なんだけど知ってるかな?」
彼女はキョトンとした顔でこちらを見ている。
今そんなにおかしいことを言っただろうか?
「学校?幻想郷にそんなものないわよ」
学校がないことより幻想郷という単語が気になった。
幻想郷?確かにこの子は今そう言ったよな?
どうやらここは幻想郷と呼ばれる場所のようだ。
しかしそんな場所、日本にあっただろうか?
ひょっとして、ここは中国かどこかなのか?
だとしたら何故僕は中国なんかに?
考え出したら止まらなくなるのでその辺は考えない事にした。
それにしても学校がないとは、ここはとんだ田舎のようだ。
「へぇ〜、ここは幻想郷っていう所なんだ」
「…もしかしてあなた、外の世界から来たの?」
またまたわけのわからない言葉を放つ少女。
外の世界?どういうことだ?
それじゃあここは何なんだ?
少女の言葉がますます疑問を増やしていく。
「ねえ、聞いてるの?」
「あ、ああ!ゴメンゴメン。で、何だって?」
「だから、あなたは外の世界から来たかって聞いてるの」
「え〜と、外の世界って言うのはどういうことかな?」
率直な疑問を投げかける。
すると彼女は怪訝そうな顔をしながら、ゆっくりと口を開いた。
「…あなた、ちょっと怪しいわね。詳しく話を聞かせてもらえないかしら?」
流石に怪しいと言われて黙っているわけにはいかないので、僕は事の経緯を話すことにした。

「ふ〜ん、なるほどね…」
僕が一通り自分の身に起こった事を話すと、彼女はさっき持ってきたお茶を啜った。
それに合わせるように僕もお茶を飲む。
口の中の苦味が精神を落ち着かせてくれる。
「大変な目にあったみたいね。境界に干渉されるなんて滅多にない事よ」
お茶を飲み終えると彼女は僕にそう言ってきた。
「へ、キョウカイってあのシスターがいる?」
「何それ?私が言ってるキョウカイは境目の方よ」
「あ、そっちか;」
境界と教会を間違えるとは、どうやら僕はまだ気が動転しているようだ。
しかしこの話を聞いて驚かないとは、もしかしてこの子は何か知っているのだろうか?
もしくは何でも鵜呑みにしてしまうとかオカルト好きとか、この子の性格の問題か。
「あ、自己紹介がまだだったわね。私はここの巫女で博麗霊夢と言うわ。あなたは?」
「あ、僕?僕は…」
彼女が自己紹介をしたのでこちらもそれに応じようとしたが言葉が止まる。
自分の名前が思い出せない。
思い出そうとすると頭の中がもやもやする。
「あれ?何でだ?自分の名前が思い出せない…」
「ひょっとして、記憶喪失なの?」
彼女が心配そうな顔でこちらを見る。
自分で言わせてもらうなら記憶『喪失』と言うより記憶『消失』と言った感じだ。
作為的に記憶を操作された感じがするのだから『喪った』より『消された』の方が正しいだろう。
そんな事より自分の名前まで思い出せないとは思っていなかったので無性に焦ってきた。
一体、僕は誰で、何故ここにいるのだろうか?
「名前がなくっちゃ何て呼べばいいかわからないわね…」
彼女は彼女で別の心配をしていた。
僕自身は名前を思い出せない以上、別に何と呼ばれてもいいと思っている。
まあ便宜上決めておいたほうが楽だろうけど。
「僕は別に何でもいいよ。君の呼びたいように呼んでくれれば」
「そう?じゃあ『げろしゃぶ』でもいいの?」
「勘弁してください」
「冗談よ」
真面目な顔で言うので本気かと思ってしまった。
いくら何でも『げろしゃぶ』だけは勘弁願いたい。
「…優(ゆう)なんてどうかしら?」
今度は普通の名前が出てきたので逆にこっちが呆気に取られた。
しかし『げろしゃぶ』よりは断然いい。
「いいけど、でも何でその名前に?」
「優しい目をしてるから。外から来た人間にしては綺麗な目をしているわ」
「よく解らないけど、僕は褒められてるのかな?」
「もちろん。これ以上にない褒め言葉よ」
褒められたのならお礼を言わなければいけないだろう。
「ありがとう。それじゃあ僕はそろそろ行くよ」
ついでなのでお礼と一緒に外に出る事を告げる。
「あら、どこに行くつもりなの?」
「ちょっと周辺をうろついてくるよ。お茶ご馳走様」
「それならお参りしてからの方がいいわよ」
満面の笑みで参拝を勧める彼女。
お賽銭目当てであることは見て取れるが、お世話になった恩もあるのでここは素直に従っておくことにしよう。
ごそごそと右後ポケットから財布を取り出す。
小銭を出そうと財布を開いた瞬間、とあるものが視界に飛び込んできた。
それは僕の写真が入った清陵学園の学生証だった。
カード入れの部分に入っているせいで名前が見えなかったが、この時には自分の名前のことなんてどうでもよくなっていた。
「…もう少し、この状況に浸っているのも悪くないかな」
「何か言った?」
「何でもないよ」
折角なので僕は、新たな人間『優』として生きることを堪能することにした。
「神様、元の世界に帰すのはもう少しだけ待ってください…」

長いお祈りを済ませると優は外に歩き出した。
「それじゃあ霊夢ちゃん、またね」
「あ、優」
「何?」
「外には妖怪がいるから気を付けなさいよ」
「うん」
彼はそう言うと神社の外に消えていった。
優がいなくなったのを確認すると、私は彼を引き込んだと思われる人物を呼んだ。
「紫、出てきなさい」
空中に亀裂が走り、その亀裂から一人の女が出てくる。
境界を操る大妖怪、通称スキマ妖怪の八雲紫だ。
「あら、あなたから私を呼ぶなんて随分珍しいわね」
「紫、あの子をここに連れ込んだのはあなたの仕業なの?」
単刀直入に問いかける。
仮に紫の仕業だったなら含み笑いを浮かべて「さぁてね♪」なんて言うはずだ。
「何のことかしら?あたしはさっき藍に起こされたばっかりよ?それにあの子って誰のこと?」
しかし紫は予想と違う反応をした。
ということは今回の件に関しては紫は無関係なのだろうか?
「外の世界から来た男の子よ。名前が思い出せないみたいだから優って名前をつけたんだけど、本当に何も知らないの?」
もう一度聞いてみたが紫は首を横に振るだけで、それらしい様子はまったく窺えない。
「知らないわね。私はそんなことに関与した覚えはないわよ」
何にしろ、これで優の手がかりはゼロに戻ったわけだ。
「そう…わかったわ。何かわかれば教えてちょうだい」
「はいはい」
それだけ言うと紫はスキマの中に帰って行った。
紫の仕業ではないとしたら、一体誰がこんなことをしたのだろうか?
いや、そもそも他の誰がこんなことを出来るだろうか?
幻想郷の中で外の世界と関われる力を持つのは、私の知ってる限りでは紫しかいない。
では他にそんな力を持つ妖怪がいるのだろうか?
「…仕方ない、ちょっと自分で調べてみるかな」
外の世界から来た人間、優(仮名)。
マンネリ化していた幻想郷の生活で、私は久しぶりに他人に興味を持っていた。(終)
posted by 活焦刃 at 13:52 | Comment(5) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
LOS×東方プロジェクト第1弾、完成しました。
12弾までありますので完成次第随時載せていきたいと思いますv
Posted by 活焦刃 at 2007年09月04日 14:06
隊長の新作、読ませていただきましたです。
突然、幻想郷に迷い込んだ少年と、幻想郷で暮らす巫女
これから何が起こるのか、続きがとても楽しみです、
隊長の小説、陰ながら応援してます、それでは。
Posted by ムームー at 2007年09月04日 17:18
実は優と霊夢の話はここでお終いなんです;
次の話からは別のキャラ同士の掛け合いが始まりますw
乞うご期待^^
Posted by 活焦刃 at 2007年09月04日 18:34
そうだったのですか、それはチョット残念ですね、
それでは、次回作を、楽しみに待ってますです。
Posted by ムームー at 2007年09月04日 19:51
ストーリー自体は並行して話が進むようにしてるので、幻想郷に迷い込んだ理由やら何やらは後々に判明していくようにする予定です。
ちなみに次のストーリーは棗×パチュリー、「幻想郷の知識人P」です。(棗は優同様、記憶消失中の名前です。誰か分かりますかな?( ̄ー ̄)ニヤニヤ)
Posted by 活焦刃 at 2007年09月05日 14:12
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

<このサイトについて>
活焦刃の「第3回全世界異種格闘技大会に向けて」は、執筆中の小説を掲載することを目的としたブログです。
二次創作が多いですが、オリジナル小説の完成および公開を目標としています。
<活焦刃ついて>
シスプリが大好きです。咲耶が一番好きです。多分これだけは一生変わらないと思います。
MAが好きです。カンナが一番好きです。天桐神奈親衛隊隊長やってます。
東方が好きです。魅魔様が一番好きです。クリア経験は靈異伝両ルート、夢時空全キャラ、幻想郷W魔理沙、萃夢想全キャラ、風神録レザマリ(+EXクリア)、緋想天全キャラだけです。
格闘ゲームが好きです。割と何でも手を出します。萃夢想では美鈴、緋想天では萃香、非想天則では萃香&美鈴使いです。
エロいです(コラ
<作品について>
「Legend of Sisters」(以後LOS)…このサイトの一番メインの小説。現実世界の高校生が小説の世界を救う、といった話。若干設定が異なるアナザーストーリー版も存在する。しかしどちらも1話すら完成していない;
「狼牙」…LOSより少し前の時代のストーリー小説。LOSにも、主人公たちが読むライトノベルとしてその名前が出てくる。ストーリーの進行はLOSとほぼ一緒。
「多夢音楽劇場」(以後TMT)…TAM MUSIC FACTORYさんの音楽を、勝手なイメージで小説化したもの。進路に悩む高校生男子と生霊になった女の子の話。はっきり言ってありえないストーリーw
「活焦刃的MA妄想劇場」…MAチャットルームにてセリフのみで書き上げた作品。読みにくい上に効果音まで書いているのであまり盛り上がらない。
「LOS×東方project」(以後L東)…LOSの主人公と東方のキャラを掛け合わせた小説。全17章で構成されていて、現在第1章のみ公開中。
「LOSvs東方project」(以後L東2)…東方の音楽を聴きながら浮かんだイメージを小説化したもの。こちらはLOSの主人公が、東方の世界の異変解決に挑む話。東方狂信者には大変面白くない構成^^;
<LOSと狼牙について>
ストーリー
誕生秘話
キャラ紹介 @ A B C D E F G H I J K
用語辞典
<L東とL東2について>
-L東-
第1章:博麗の巫女との邂逅〜東方邂逅記〜
第2章:幻想郷の知識人P〜東方調査帖〜
第3章:幻想郷の知識人K〜東方教育譚〜
第4章:幻想郷の知識人E〜東方月影説〜
第5章:あの子は普通の魔法使い〜東方想恋陣〜
第6章:少女の秘密は恋心〜東方操演舞〜
第7章:超動物愛護精神〜東方寵愛録〜
第8章:Hの為の勉強会〜東方勉強会〜
第9章:妖怪でも女の子は女の子〜東方真心談〜
第10章:相手にとって不足なし!〜東方武神伝〜
第11章:白玉の誓いは永久に〜東方狂戦夜〜
第12章:超越者たちの戦い〜東方激闘史〜
第13章:因幡の白兎娘×2〜東方兎秘話〜
第14章:戦慄の旋律を奏でる者〜東方合奏団〜
第15章:春に呆ける秋の虫〜東方春物語〜
第16章:割と暇な閻魔の一日〜東方暇魂塚〜
最終章:最初で最後の宴〜東方総出宴〜
-L東2-
第1弾:紅魔討伐伝(紅魔郷)
第2弾:妖桜刹華伝(妖々夢)
第3弾:萃騒狂宴伝(萃夢想)
第4弾:永夜消月伝(永夜抄)
番外編:黒史解明伝(旧作)
@幻想回帰(幻想郷)
A怪奇目録(怪綺談)
B封印決壊(封魔録)
C夢現空間(夢時空)
D靈影追跡(靈異伝・魔界)
E靈気退散(靈異伝・地獄)
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。